Artist PlusのBlogに足をお運びいただき、誠にありがとうございます!
今回は小笠原が書きます。
本日のテーマは、演奏家なら必ず意識したことや指導を受けた経験があるであろう「腹式呼吸」についてお話していきます!
みなさん、「腹式呼吸」は、その名の通り「お腹にたくさん空気を入れるように吸いましょう」と誰かに教わった経験、ありませんか?その反対に、「胸式呼吸」と呼ばれる、いわゆる「肩で呼吸する」ような浅い呼吸はダメ!ということも言われた経験があると思います。
私自身もそうでした!小学生の頃から吹奏楽でクラリネットを始めたのですが、腹式呼吸を頑張ろうとして、お腹に空気が出入りしている実感を得られるよう、意識的にお腹を膨らませたり、へこませたりしながら、決して肩が動かないように気を付けて呼吸していました。
ですが、高校生になり、先輩から「腹式呼吸をするときは背中~脇腹に手を当てて、空気が入っていることを確認するように」と指導を受けました。正直そのときは理由がわからず、言われた通りにやっていましたが、どうやらお腹に空気を入れる意識は間違っていたのかもしれない、と思い始めました。
たしかにその方法を試していると、以前よりも息をガバッと大きく吸えるようになりましたし、お腹は膨らませないので、下腹部に自然と力が入った状態で、楽器に息を吹き込めるようになりました。
そのメカニズムがどうなっているのか、初めて知ったのは、理学療法士であり、現在の日本音楽家機能解剖学指導者協会代表理事である、山本篤先生の勉強会に参加したときです!
代表の松本が書いた、Artist Plusの馴れ初めブログにも記載していましたが、山本先生は、解剖学に基づいた根拠のあるご説明をしてくださいます!
この記事は、山本先生に教えていただいた内容も含めながら、できるだけわかりやすく書いてみますので、どうぞ最後までご覧ください。
目次
1.空気は「肺」に出入りする。「肺」は胸郭にある!
空気が出入りする「肺」は、胸郭と呼ばれる肋骨・鎖骨・脊椎・横隔膜で囲まれたカゴの中におさまっています。
ご自身の肋骨で最も触りやすいのが、ウエストのくびれ部分の上側だと思います!そこで触れるのが、片側12本ある肋骨のうち、上から10番目になります。1〜10番目の肋骨は、カゴを作るように輪っかのような形となっていますが、11番目と12番目は、脊椎とだけ結合して背中側にあります。
ウエスト上側で触れた肋骨を、お腹の方へ向かって辿ると、胸骨剣状突起と呼ばれるみぞおちの上の骨にたどり着きます。剣状突起は第7胸椎と同じ高さにあります。つまり胸郭は、後ろ側が腰の上まで、前側はみぞおちまでの形となっています。
その胸郭の底辺を形成するのが、「横隔膜」です!
横隔膜は、胸骨剣状突起の内側・第7~12肋骨の内側・第1~3腰椎椎体に付着し、横隔膜の中央部にある腱中心と呼ばれる腱膜で集まって1枚のテントのような形を作っています。
肺の形は、一番上(肺尖部)が、鎖骨よりもわずかに上にあり、胸郭から上側にはみ出しています。前面の両肺の間に心臓があり、両肺には、心臓のスペースのためのくぼみがあります。肺の底辺は、前面が第6肋骨の高さ、背面が第10肋骨の高さとなっていて、横からみると、背面に向かって斜めに下がるような形となっています。
2.「胸式呼吸」で動く部分
「胸式呼吸」というのは、鎖骨や肩甲骨、1~6番の肋骨、1~6番の胸椎を意識的に動かすことで肺に空気を入れやすくする呼吸法です。胸のあたり(体幹の上部前面)に空気が入りやすいことから、胸式という呼ばれ方をされています。
胸式呼吸で主に使われる筋肉は、外肋間筋と呼ばれる、肋骨の間に付着している筋肉です。肋骨の1本1本を、上側に引き上げることで胸郭を広げる役割を担っています。
3.「腹式呼吸」で動く部分
「腹式呼吸」というのは、7~12番の肋骨、7~12番の胸椎を意識的に動かすことで肺に空気を入れやすくする呼吸法です。「腹式呼吸」と呼ばれるように、「腹部」に空気が入るような感じで息を吸う方法と思われがちなのですが、実は腹部よりも「背部」の方がよく動きます。その理由として、下の方の肋骨が、腹部側ではなく背部側に位置しているということ、および、横隔膜は、腹部より背部に広く付着していることが挙げられます。
腹式呼吸で主に使われる筋肉は横隔膜です(外肋間筋も使われます)。横隔膜は、胸骨剣状突起の内側、第7~12番の肋骨内側、第1~3腰椎に付着しており、腱中心と呼ばれる横隔膜中央部の腱膜に集まって、ドーム状の形を作っています。空気を吸い始めると横隔膜が収縮してドーム状のものが下方に引き下がり、平坦になります。そのとき肋骨も引き下げられますが、胸骨は動かないので、腹部ではなく背中が膨らみます。
4.呼吸運動では脊柱も動く
肋骨の動きと同時に、脊柱も呼吸に伴って動きます。息を吸うときには、肋骨が開くと同時に脊柱は伸展(少し伸びあがる)し、息を吐くときには、肋骨が閉じると同時に脊柱は屈曲(少し曲がる)します。
肺に十分な空気を入れるためには、脊柱の柔軟性も必要になってくるというわけです。
脊柱の周りには脊柱起立筋群と呼ばれる複数種類の筋肉や、広背筋と呼ばれる広い面積の筋肉などが付着しています。息を吸うと背中側が動くため、腹筋群よりも脊柱起立筋群や広背筋の動きが大切になってきます。
5.結論、空気は「お腹」ではなく「背中」に入る!
これまでの説明の中で、すでに結論がお分かりかと思いますが、息を吸うと、空気は「お腹」ではなく、「背中」の方に入る構造をしています!ですので、腹式呼吸で意識すべきは「お腹」ではなく「背中」なのです!
試しに、背中に手のひらを当てながら、鼻からたっぷり息を吸ってみてください。肋骨が広がり、背中が膨らむ感覚を実感できると思います。同時にお腹が膨らむ感覚がある場合は、背中が膨らんだことにより内臓が前面へ押されることで起きた可能性が考えられます。そのため、お腹が膨らむことが悪いことではなく、背中に空気が入っていることを先に意識することが、解剖学・運動学からみて理にかなっている呼吸になる、ということです。
6.呼吸と全身との関係性(概要)
呼吸に関わる骨や筋肉は、これまで説明してきた通り、たくさんあります。脊柱の項で説明したとおり、呼吸には脊柱の運動が関わっており、脊柱は頭部・胸郭・骨盤を連結する体の中心部を作る骨格になります。そのため、頭頚部の位置や骨盤の位置、それにつながる足の位置によっては、呼吸にも影響があるということです。
詳しくは今後の記事で触れていけたらと思いますので、引き続きご覧いただけると幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました♪
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