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初めまして。Artist Plusメンバーの小笠原祐未と申します。

プロフィールページにも記載している通り、私は、理学療法士の仕事をしながら趣味でクラリネットの演奏活動をしてきました。理学療法士としてのスキルアップの目的で、循環器認定理学療法士と三学会合同呼吸療法認定士の資格を取得しているため、心肺機能についての知識や運動処方の方法を患者様に提供する機会が多くあります。
心肺機能は人間の体のエンジンのようなものであり、これが機能しているから生きて活動し続けられるということは言うまでもありません。この知識は、医療現場だけでなく、アスリートのように高度なパフォーマンスをする人たちにも必要不可欠なことは容易に理解できることだと思います。もちろん音楽家にとっても重要であり、必ず演奏パフォーマンスにも活かされるものだと確信をもって学び続けてきました。
そこで、私からの発信は、まず吹奏楽の楽器奏者としては気になるであろう、「呼吸」についてのお話しを軸に展開していきます!
今回は、演奏パフォーマンスを最大限に発揮するために「呼吸を味方につけるべき理由」について解説していきます!(以下、私の個人的なエピソードをご紹介するので、結論を急ぐ方はスルーしていただいてかまいません。笑)
私は、小学3年生のときに学校の吹奏楽部へ入部し、そこからクラリネットを始めました。それより前の小学1年生の頃からエレクトーンを習っていたのですが、発表会のたびにガチガチに緊張して、顔の表情や体が固くなり、まったく本番を楽しめなかった苦い思い出が多々あります(笑)もちろん吹奏楽の各種本番でも同様のことが起きていました。高校の吹奏楽部は県代表の常連だったこともあり、比較的難しい曲にもチャレンジする機会が増えました。クラリネットといえば楽譜が真っ黒に見えるほどの連譜の山・・・という曲もあったりするわけで、練習でできたとしても本番だけ指がツルンとすべって時が止まる・・・という瞬間も幾度となく経験済みです(笑)それらすべてが、私の過度な「あがり症」が原因だということをずっとわかっていました。ですが対処法がまったくわからないまま大人になってしまいました。
理学療法士となり、職場の研修会や学術大会など人前で話す機会が増えました。そこでも私のあがり症は大いに発揮されていたのですが、それを自分である程度コントロールできると確信したのが、いまから7年前に学会発表をしたときのことです。口述発表の会場は、約1500人を収容できるほど大きなホールでした(座席は半分も埋まっていませんでしたが。笑)。ステージに上がると、吹奏楽の本番では見慣れた光景でしたが、なんといってもステージ上には私1人!俯瞰してみると、自分にとっては有り得ないほど緊張する状況でした。ですが、その時の私はすでに呼吸の知識や自律神経をコントロールする方法を、知識としてもっていました。そこで、これからご紹介する方法を試したところ、人前で話すときの、のどが詰まるような感覚と声の震えが、そのときはまったくなく、最後まで堂々と話すことができ、「これだ!」と確信したのを今でも覚えています。その後、吹奏楽やアンサンブルの本番のときにも必ず意識するよう努めてきたので、いい結果がついてくることも増えました(それでもアンサンブルコンテスト全国大会では、練習でやったことのない「落ちて1小節消える」ミスをしたこともありましたが。笑)試した方法は本当に簡単なことなので、私と同じような悩みを抱えている多くの方々に届くよう、こちらで発信したいと思います!
目次
1.パフォーマンスに最高な状態で臨むために重要な要素は緊張のコントロール
大事な場面でのパフォーマンスに最高な状態で臨むために重要な要素は、「緊張をコントロールすること」だと考えられます。
緊張は、身体の活動にとって必要なものであり、パフォーマンスを最大限に発揮する上では重要です。「火事場の馬鹿力」という言葉があるように、いざという場面での精神的な緊張感が、今までに発揮したことのないような力を生み出すことはよくあります。
「緊張」という言葉を生理学的に説明すると、以下の通りになります。
緊張している状態=交感神経が優位になっている状態
自律神経とよばれる、人間の生命維持活動を自動的にコントロール(自律)する機能のなかに「交感神経」があります。
自律神経は、交感神経と副交感神経の2種類あり、この2つが状況に応じて興奮したり、鎮まったりすることで、体温、血圧、心拍数、呼吸などを微調整しています。
交感神経が興奮すると、体温・血圧・心拍数・呼吸数は上昇し、副交感神経が興奮するとそれらは低下します。
それぞれが単独で変化するのではなく、交感神経が興奮すると副交感神経が鎮まり、副交感神経が興奮すると交感神経が静まる、というようにお互いの微調整によりバランスをとっています。
交感神経は朝起きてから活動している時間帯に興奮しやすく、副交感神経は夜眠るときやリラックスしているときに興奮しやすいと言われています。
不眠症の人が交感神経優位の状態であることが多いとよく言われるのはそのためです。
2.過度な交感神経の興奮がパフォーマンスに影響を及ぼす
演奏パフォーマンスをする上で、交感神経が興奮することは、メリットもありますが、デメリットもあります。過剰に興奮してしまうと、以下のような症状を招いてしまうことがあります。
・息苦しくなる
・ドキドキする
=心拍数や呼吸数が上昇し、テンポ感が狂う
・全身の筋肉が凝り固まる
・思うように動けない
・異常に汗をかく
・手や足が震える
これらが演奏パフォーマンスに悪影響を及ぼすことは、簡単に想像できると思います。
3.自律神経を自らコントロールする唯一の方法が「呼吸」
これは自律神経の働きにより 無意識に起こる反応ですが私たちには自律神経を意識して コントロールする方法があります
それが 呼吸です
緊張すると交感神経が優位になり、呼吸が速く浅くなります。息苦しくなりさらに呼吸が早く浅くなり それによって交感神経がさらに優位になり、緊張状態から脱却できません。このような悪循環を断ち切るために意識してやることがゆっくり深く呼吸することです。
特に吐く方を意識することで、副交感神経が働きやすくなり、交感神経の働きが鎮まってリラックスした状態になる、という仕組みがあります。
4.推奨される「腹式呼吸」の方法
呼吸の方法で 推奨されるのが腹式呼吸と呼ばれる 呼吸法です
① 口をすぼめて、 息を細く長くゆっくり 吐き出す
② 完全に吐き切ったら鼻からたっぷり吸って最後に口を大きく開けて吸う
③3秒ほど 息が止まっているような状態をキープする
( ぐっとこらえて 止めないように)
①から③までを数回繰り返す
5.息をしっかり吐くことを意識する重要性
息は、「吐けば吸える」!
そのメカニズムを解剖学的・運動学的に解説します。
肺は、 肋骨などの骨で囲まれた胸郭という、かごのようなものに囲まれています。 胸郭と肺の間には、 胸膜腔という空間があり、そこは大気圧よりも常に低圧になっています。これを陰圧といい、内部の圧が外部より低圧になっている状態を指します。水が高い所から低い所へ流れるように、空気も気圧が高い方から低い方へ流れます。そのため、肺は常に胸膜腔内の陰圧により外側へ向かう空気の流れがあり、広がる方向に力がかかり続けています。肺の容積が小さくなって胸膜腔が大きくなるほど、より陰圧になります。肺の呼吸運動は、息を吸うとき、横隔膜が収縮して下方へ移動することで胸腔内がさらに陰圧になり、胸郭が広がり肺が広がって空気が入ります。(圧縮袋を開くときをイメージしていただくとわかりやすいでしょうか!?袋を開こうとして引っ張る手の役割が、横隔膜です!)息を吐くとき、横隔膜が緩んで胸郭と肺が自動で戻り、空気を吐き出します。ここまでが、努力的ではない「安静時の呼吸運動」です。
努力して息を完全に吐き切るときは、肺がしぼんでいくのですが、完全にしぼんでしまうと肺に空気を取り込めなくなってしまいます。
そこで活きてくるのが、胸膜腔内の陰圧です。陰圧になっているおかげで、肺は外側から常に引っ張られている状態なので、もとの大きさに戻ろうとします。
そのため、完全に吐き切った時の方が、胸膜腔内がより陰圧となり、肺を引っ張る力が強くなり、息をたくさん吸いやすくなる、ということです。
本番直前や演奏中はとにかく息をしっかり 吐き出すことがたっぷり することにもつながり、落ち着いてパフォーマンスを発揮できると考えられます。
緊張を和らげる以外にも
・息が長く続かない
・たくさん吸うのが苦手
と悩んでいる方は一度 息を吐ききる練習をしてみてはいかがでしょうか ?
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